改訂版2 ギャブル依存症調査の質問表を追記 (厚生省の調査に使用した)
「博打」の最大の問題は依存症と考えてます。「博打」をしないでは生きてはいけなくなります。究極は自殺・破産です。こうした影響は本人だけでなく周囲10人に及ぶとし、家族の自殺率も3倍になるとする報告もあります。
それなら依存症の人が現在どの位いるのでしょうか。諸外国では1~2%とされてます。
日本では厚生労働省調査班の「報告書」では以下とされてます。
男性 女性 全体 サンプル数 有効回答数
・2008年調査 9.6% 1.6% 5.6% 7,500名 4,123名
・2014年調査 8.7% 1.8% 4.8% 7,052名 4,153名
カジノ反対の第一人者鳥畑与一(静岡大教授)著書「カジノ幻想」
174~176頁から作成。
日本は際立って高いとされています。しかし、この「報告書」の調査手法に問題があるとし、実際は諸外国の1~2%と変わらないのではないかとする人もいます。
しかし、上記著書ではSOGS(サウス・オークス・ギャンブリング・スクリーン)という諸外国でも一般に用いる評価基準でしているとあります。
朝日新聞2014.10.18 カジノ深層 下 より
日本には「パチンコ」と言う特殊な「博打」があり19兆円産業(2014年)でもあります。
要はギャンブル依存症を放置した人達が「それ行けドンドン」をやってるのが問題であるとIRを肯定的(?)にとらえてる人も言ってます。
それなら、IR型「博打」先行国のシンガポール、韓国はどう対策をしているのでしょうか。結論から言えばどれも上手くいってないようです。
「それ行けドンドン派」代表格の木曽崇氏(千葉市IR議連御用達の人です)の著書でも「...ギャンブル依存症はカジノが存在する限り必然的に発生してしまうものであり、このリスクをゼロにすることは不可能です。」とあります。
「依存症対策としての実効性の高さが認められいる施策」として「全登録制」の採用をあげています。すなわち入場者に個人情報を登録させIDで管理しょうとするものです。
しかし、日本弁護士連合会「カジノ解禁推進法の取り下げ・廃案を求める」院内集会資料ではシンガポールや韓国のカンウォランドではすでに採用されてますが有効性は疑問です。
実施されているIDによる管理。
シンガポール
・シンガポール市民からの入場料徴収 一日100ドル(8000円)、
年間2000ドル(シンガポールドル)
・入場禁止(生活保護受給者、21歳未満、学生等)
・回数制限(1ヶ月に6回以上入場した場合に、口座等を調査して、
カジノ入場回数を制限、ただし、調査は任意)
韓国のカンウォランド
・毎月の出入日数制限:地域住民は月1回のみ
・2ヶ月連続15日出入客:出入制限し、義務カウンセリングして
出入りを許可
・1分期のうち30日以上の出入客:義務教育および確認書を作成し、
出入りを許可
・本人および家族出入制限制度:本人または家族が出入制限申込
・出入日数自己統制制度:本人自ら出入日数を月15日以下に申込
こうしたIDで入場制限をしても結局上手く行かないので最終手段として入場禁止にします。
シンガポールや韓国のカンウォランドも本人や家族からの申し出で入場禁止にしています。
シンガポールでは何と「カジノ規制庁」まであります。
シンガポールでは183人の入場制限者が、4年で21万5千人に。それでも78才の女性が他人のIDで19回入場していました。
(表注 自己申告 = 地元 + 外国
排除総数 = 家族申告 + 自己申告 + 第3者排除)
韓国のカンウォランドは家族からの申し出で入場禁止にしましたが、他の家族が入場禁止を解除した例もあります。
入場禁止時点で重度の依存症と考えられます。入場禁止者の半数以上が自己申告者です。もはや自分の意志では行くのを止められなくなってます。それでもまで自己申告できるだけでも良いでしょう。あとは家族や第3者です。
「博打場」に通うとどの位の人が依存症になるのか、韓国の江原(カンウォン)ランドの例が週刊誌で報告されています。
国の「射幸産業統合監督委員会」が実施した07年の調査結果によると、江原ランドの利用客の79.3%がギャンブル依存症で、ただちに治療が必要人は53.9%に達した。また、与党議員が江原地方警察庁に提出させた資料では、08年から昨年までの6年間に自殺した客は48人いた。(韓国ではカジノ運営から13年)
注 自殺者48名は「博打場」での人数で場外では不明ですが、後述するように500人以上とする考え方もあります。
関連は日本弁護士連合会の街頭演説 JR有楽町駅前 2014年11月11日 12~13時から日弁連多重債務問題検討ワーキンググループ 座長 (全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会 代表)新里宏二 弁護士の演説です。(5分頃から)
新聞報道からの引用(編集者の要約)。
シンガポールではID管理や入場禁止措置で依存症者は2008年の2.9%から11年で2.6%に低下した。しかし、依存症対策審議会によると、ギャンブルの電話相談は年2万1千件で09年の4倍に増加。
依存者が減少してることに関しては、カジノ反対の第一人者鳥畑与一(静岡大教授)氏は「カジノ幻想」で現地の聞き取り調査から以下のように書いてます。(166~168ページ)
・依存者は近隣諸国に行ってる。
・依存症は隠す病気で回答拒否をしてるのではないか?(回答率が低下してる)
日本弁護士連合会「カジノ解禁推進法の取り下げ・廃案を求める」院内集会資料23ページでは「シンガポールの政府機関(NCPG等)が依存問題がないというイメージを流布している」としています。
日本弁護士連合会「カジノ解禁推進法の取り下げ・廃案を求める」院内集会資料では複数の執筆者がそれぞれバラバラに書いてるので以下にまとめます。
・多重債務者の増加 -> ヤミ金、質屋の増加
日本では総量規制等(年収の1/3以下)で多重債務者が減少してきたのが
再び増加する恐れがある。シンガポールでは日本より厳しいが正規、非正規の貸
し金業者が拡大。
・借金は増大傾向にあり、若者の犯罪・クレジットカードの偽造・盗難・
家庭内暴力・育児放棄・ギャンブル問題・薬物による攻撃性は増大していると
広く認知されている。(シンガポール)
・どんな徹底的な中毒防止管理システムを備えていたとしても、
「射幸産業」としての副作用(家族崩壊)自殺、地域共同体の破壊などを
根本的に防ぐことはできなかった。(韓国)
・増加する自殺企画(シンガポール)
・物質依存と比較して分かりにくいギャンブル依存。判明したときは深刻な
事態に。依存者一人の影響が周囲の10~20人に及ぶ。(シンガポール)
・韓国の例
帰宅支援制度->自宅に帰る旅費がない
緊急危機的状況顧客にたいする支援
病院治療費支援:カジノ永久制限が条件、入院費支援(最大2千万ウォン)
職業復帰支援:カジノ永久制限が条件が条件、職業復帰過程支援
(最大6百万ウォン)
編集者注 韓国・シンガポールは国が主体で管理してます。日本では自治体が管理の予定です。例えば習志野市の住民が依存症になったらその対策費は千葉市が出すのだろか?本当に千葉市の「博打場」で依存症になったのかの認定も難しい。
引き続き韓国の江原(カンウォン)ランドの例を週刊誌の記事から。(要約)
江原ランドの近い古汗(コハン)という町にはカジノで財産を使い果たし、職や家族を失った「カジノ・エンボリ」と呼ばれる人たちがたくさん住みついている。
江原ランド内や周辺で自殺者がでると警察がカジノの客名簿と照合するらしいがほとんどがカジノの出入り記録がある。
江原ランドは14年も営業していて収益を増やしている。自殺者は少なくても500人以上になると考えるのが妥当じゃないのか。
江原ランドを訪れる客は年間300万人になるが、そのうち中毒防止管理センターで診断を受けたのは20件くらい。
依存症になった人は「上客」で依存症対策の意志などあるわけがない。
日本弁護士連合会「カジノ解禁推進法の取り下げ・廃案を求める」院内集会資料17ページカジノを解禁するかどうかについて、ビジネスモデルとしての妥当性・ギャンブル依存症の疫学調査・地域への影響 などの論点がまず精査されなければならないが、現状では議論のための基礎資料すら無い。この状況での解禁論は無謀である。
日本弁護士連合会「カジノ解禁推進法の取り下げ・廃案を求める」院内集会7ページに衝撃的な報告書があります。
韓国の「射幸産業統合監督委員会」が出した
「賭博中毒者の年間社会・経済的費用(6.1%)」
6.1%(7.8兆円)の分母は韓国のGDPのようです。日本に例えれば30兆円です。7.8兆円(年間)の数字は他の本でも引用されています。この報告書の凄いところは依存症の治療費だけでなく、依存症になると「職場内の成果低下(生産低下)」による損失まで評価してることです。
続きは続・依存症 「一度たくあんになった脳は二度と大根には戻らない」です。
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